建築士や施工管理技士の試験で必ず出題される「日照・日射・日影」の問題。
「専門用語ばかりで、何が何だかわからない…」
「日射量とか天空日射って、正直ピンとこない…」
そんな方のために、本記事では太陽と建物の関係性を軸に、中学生でも理解できる言葉と図解的な解説で丁寧に説明します。建築の基礎力を底上げし、実務でも活かせる内容です。
目次
- 日照・日射・日影とは?基本用語をマスター
- 天空日射量と日照率とは?数式と図で理解
- 冬至と夏至で日射量はどう変わる?方位別で解説
- 終日日影と永久日影の違い
- 大気透過率が日射に与える影響
- ルーバーで日射をコントロールする方法
- 隣棟間隔の求め方と日影規制との関係
- 試験対策まとめ&勉強法
1. 日照・日射・日影とは?基本用語をマスター
まずは混同しがちな3つの言葉の意味を、イメージとともに整理しましょう。
用語 | 意味 | ポイント |
---|---|---|
日照 | 太陽の光が直接地表に当たっている状態 | 「日照時間」は太陽が出ていた時間 |
日射 | 太陽からの光エネルギーの量 | 日射量(エネルギー)は方向や天候で変化 |
日影 | 建物や地形で光が遮られて影になる場所 | 冬場や高層建物で特に注意 |
2. 天空日射量と日照率とは?数式と図で理解
■ 天空日射量とは?
- 晴れた日の直射日光とは違い、空全体から散らばって届く光の量です。
- 曇りの日でも明るいのは、この天空日射のおかげ。
- 実務では「屋上緑化」「自然採光設計」などに役立ちます。
☀️ 太陽光 = 直達日射 + 天空日射
※直達日射は太陽からまっすぐ届く光、天空日射は空全体からのやわらかい光。
■ 日照率の計算式
日照率(%)=(実際の日照時間 ÷ 可照時間)×100
- 可照時間:その日その場所で理論上日が当たる時間
- 例:12時間中、6時間日が当たったら日照率は50%
3. 冬至と夏至で日射量はどう変わる?方位別で解説
■ 冬至(12月22日頃)の特徴
- 太陽が低い角度で動く
- 南向きの壁に一番日が当たる!
方位 | 日射量 |
---|---|
南向き | ◎ 多い |
東・西 | △ 少し |
北向き | ✕ ほとんどなし |
🌞冬は「南向き窓」が断然有利!住宅設計の基本。
■ 夏至(6月21日頃)の特徴
- 太陽がほぼ真上に近い角度で動く
- 東西の壁に強い日射があたる
方位 | 日射量 |
---|---|
東・西 | ◎ 朝夕に強い日差し |
南 | △ 日射はあるが短時間 |
北 | ✕ ほとんどなし |
☀️特に西日対策(午後の暑さ)は重要。ブラインドやルーバーの設置が有効です。
4. 終日日影と永久日影の違い
用語 | 定義 | 例 |
---|---|---|
終日日影 | ある1日中、日が当たらない場所 | 高層ビルの北側 |
永久日影 | 1年中どの日も日が当たらない場所 | 崖の北側・谷底など |
☝️試験では「夏至に終日日影=永久日影」と覚えると◎
5. 大気透過率が日射に与える影響
- 大気透過率が高い(空気が澄んでる):
- 直達日射が強くなる
- 天空日射は弱くなる
- 大気透過率が低い(曇り・PM2.5多い):
- 直達日射が弱くなる
- 天空日射が主役に
状況 | 直達日射 | 天空日射 |
---|---|---|
晴天 | ◎ 強い | △ 弱い |
曇り | ✕ 弱い | ◎ 強い |
6. ルーバーで日射をコントロールする方法
■ ルーバーとは?
- 窓や壁の外に設置する「すだれ」のような建材。
- 日射を遮って室内温度上昇を防ぐ。
種類 | 特徴 | 遮る光 |
---|---|---|
縦ルーバー | 縦に板が並ぶ | 東・西からの光(特に西日)に有効 |
水平ルーバー | 横に板が並ぶ | 夏の高い太陽(南面)を遮る |
💡夏の冷房効率UP、冬は取り込む工夫で省エネ住宅へ。
7. 隣棟間隔の求め方と日影規制との関係
日影による周囲の建物への悪影響を防ぐため、建築物同士の距離にはルールがあります。
■ 隣棟間隔の計算式
隣棟間隔 = 前面隣棟間隔係数 × 南側建物の最高高さ
- 前面隣棟間隔係数:地域の条例で決まっている数値(例:0.7など)
- 高い建物ほど広い距離を確保しないといけない
例 | 計算 |
---|---|
建物高さ10m、係数0.7 | 10m × 0.7 = 7m以上の距離が必要 |
8. 試験対策まとめ&勉強法
✅ 覚えるべきポイント
- 南向きは冬に強い、東西は夏に強い日射を受ける
- ルーバーの向き=太陽の角度を考慮
- 日影=建物の高さと太陽の角度から計算
- 天空日射と直達日射の違いを理解
- 永久日影=夏至でも太陽が当たらない場所
📚 勉強法のコツ
- 実際に太陽の動きを観察
- 学校や自宅で影がどう伸びるか観察
- 図面問題は、東西南北の位置を最初にチェック!
- 過去問演習×図解のセットで記憶に定着
✍️ まとめ:日射と日影は「快適な建築」の基本
日照・日射・日影は、建物の設計や配置において快適さ・省エネ・法律遵守をすべて左右する要素です。試験対策だけでなく、現場での設計判断にも役立つ知識なので、今のうちにしっかり身につけておきましょう。